【情シス実録】マスタ一括更新の罠。「商品名が変」と言われた社内SEの右手は、静かに震え始めた。

目次
■ はじめに:社内SEの「全能感」と「絶望」は隣り合わせ
社内SEにとって、マスタデータの流し込みは一種の「魔法」です。
何千、何万というデータを、Excel一枚で一瞬にして書き換える。インポートボタンを押した直後の「完了」メッセージには、他では味わえない全能感があります。
しかし、その魔法は時として、呪いに変わります。
今回は、システムメンテナンスにまつわる「絶望と悟り」の記録をお届けします。
唯一の武器は「Excelデータの流し込み」
我が社のメインシステムは、外部のシステム会社が提供するパッケージ製品。
セキュリティとデータの整合性を守るため、データベース(DB)を直接操作することは許されません。
マスタを更新したければ、システム指定のExcelテンプレートにデータを整え、吸い込ませる。これが唯一の道です。「SQLで一括更新できれば一瞬なのに……」という不満を飲み込み、私は今日もExcel職人として「最強のインポート用データ」を作り上げていました。
恐怖の宣告「商品名がなんか変なんですけど」
数時間の格闘の末、全件のインポートが完了。「これで今夜は定時退社だ」と勝利を確信したその時、内線電話が鳴り響きました。

商品名がおかしいことになっているんだけど…

あ、すぐに確認しますね~(まずい、絶対さっきのExcelだ。)
その言葉を聞いた瞬間、背筋が凍りつきました。経験上、知っています。「1行目が変」ということは、2行目も、1,000行目も、同様に「Excelの親切心(お節介)」によって汚染されていることを。
そして、マスタデータの一括修正は良いデータも悪いデータも関係なく、一瞬で書き換えてしまいます。
震える右手、Excelインポートの罠を再確認
「すぐ確認します!」と電話を切り、震える右手で元のExcelファイルを開くと、そこには「Excelあるある」の地獄絵図が広がっていました。
- 自動変換の罠: 商品コードの「1-2」が、勝手に「1月2日」の日付形式に。
- 0落ちの悲劇: 先頭の「0」が消え去り、数値扱いになったIDの桁数が不足。
- 数式の残骸: VLOOKUPの結果がエラーを吐き、無機質な『#N/A』が整列。
最大の絶望「一括修正、非対応」
「いいだろう、Excelを修正して再インポートだ!」と意気込んだ私を、さらなる絶望が襲います。
システムの仕様書をよく見ると、非情な一文が。
『※注:〇〇フラグおよび備考欄は、Excelによる一括更新に対応していません。画面より個別に修正してください。』
インポートできない? つまり、魔法はもう使えない。
私は覚悟を決め、震える右手を左手で必死に抑えながら、画面上の「修正」ボタンを1件ずつクリックし始めました。
まとめ:社内SEが学んだ「マスタ流し込み」の教訓
ようやく数千件の手作業が終わったとき、私の右手はマウスの形に固まっていました。今回の血を吐くような教訓を共有します。
インポート前には、全セルを選択して書式設定を「文字列」に叩き直せ
Excelの自動変換を防ぐ唯一の自衛策です。
- 「商品名が変」と言われたら、オートフィルタで全項目をチェックせよ
- エラー値(#VALUE!や#N/A)が紛れていないか、目視確認は必須です。
- インポート非対応項目がないか、仕様書を穴が開くほど読め
手動修正が必要な範囲を事前に知ることで、精神的ダメージを軽減できます。
インポートボタンを押す前の1秒の深呼吸。それが、あなたの深夜残業を救うかもしれません。
【後日談】「やらかし」の連鎖と、社内SEの悟り
ようやく数千件の「写経」を終え、右手がマウスの形のまま固まっていた数日後のこと。
営業部から「ちょっと来てくれませんか……?」と、消え入りそうな声で内線が入りました。
「(まさか、また私のマスタ修正に不備が……!?)」
と、内心ビクビクしながら向かうと、そこには顔面蒼白の担当者が。
話を聞けば、お客様の販売単価を一括削除で全消去してしまったとのこと。
「やってしまった……」と絶望する彼らの姿は、数日前の私そのものでした。
私は、まだ少し震える右手で彼らの肩を叩き、「大丈夫やで〜」と微笑みました。
幸い、削除に使ったExcelデータが残っていたため、それを逆インポート(再登録)して無事復元。営業部には「神」のように感謝されましたが、心の中ではこう思っていました。
「一回は、みんなやってしまうもんなんよね……」
失敗して、1行ずつ直して、初めて人は優しくなれる。
マスタデータの重みを知る。
そんな、少しだけ背中がたくましくなった(気がする)社内SEの冬の日の出来事でした。
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