今日もお疲れ様です。
先日、「あったら便利」を全部盛り込むと、見積書が”ロマン砲”になってしまうという記事を書きました。まだご覧になられていない方は、ぜひこちらもご覧ください。
👉 【社内SEコラム】ちょっと待った!その「ロマン砲」、本当に必要ですか?

今回は、そのロマン砲とは少し違う意味で、**社内SEを悩ませる「システム導入時の再現率0%の怪」**のお話です。
新システム稼働は、本当のスタート
社内SEにとって、数千万円、時には数億円を投じた新システムの本番稼働は、プロジェクトのゴールではありません。
ある意味、本当の戦いの始まりです。
導入直後から現場では、「動かない。」、「前と動きが違う。」、「データがおかしい。」
と、次々に問い合わせが入ります。
その内容を確認してシステム会社へ調査を依頼しますが、返ってくるのは決まってこの言葉でした。
「証拠がないと調査できません。再現手順を確認していただけますか。」
一見すると冷たい回答に聞こえるかもしれません。
ですが、社内SEの立場から見ても、この回答は正しいのです。
システム会社も、原因が分からないまま修正することはできません。
原因を特定しないままプログラムを修正すると、別の不具合が発生したり、最悪の場合はシステム全体に影響が及ぶ可能性もあります。
だからこそ、確実な証拠と再現手順が必要になります。
しかし、その間に立つ社内SEとしては、現場からの問い合わせとシステム会社からの回答の板挟みになり、胃が痛くなる毎日でした。
現場の阿鼻叫喚と再現しないバグ
新システムのリリース当日。
現場からは次々と電話が鳴ります。
「データが消えた。」、「ボタンが反応しなかった。」、「さっきまでできていたのに。」
ところが詳しく話を聞くと、
「もう一回やったら直った。」、「どう操作したか覚えていない。」
ということも珍しくありません。
これではシステム会社も調査できません。
証拠がない。
再現もしない。
社内SEなら、一度は経験したことがある状況ではないでしょうか。
私も、
- 特定の担当者だけ発生する
- 月末だけ発生する
- データ件数が多い時だけ発生する
- ネットワーク負荷が高い時間帯だけ発生する
といった、まるで条件が隠されているような不具合を何度も経験しました。
月末になると必ず発生するのに、月初になると何事もなかったように動く。
担当者が変わると発生しない。
そんな「本当にそんなことある?」と思うような現象も珍しくありませんでした。
私は、現場とシステム会社の間にある「再現しない」という大きな壁と向き合うことになりました。
社内SEが見た「現場のリアル」
原因を探すため、現場へ何度も足を運びました。
そこで見たのは、検証環境では想像もつかない操作ばかりでした。
現場の職人社員ならではの超高速入力
現場では一日に何百件もの入力を行います。
そのため、一件でも早く終わらせるために、それぞれが独自の操作方法を身につけています。
例えば、
- 画面が切り替わる前からEnterキーを連打する。
- 警告メッセージが表示された瞬間に閉じる。
- 画面を見るより先に手が動いている。
社内SEやシステム会社が普通に操作していては、まず再現できないスピードでした。
現場では1クリック増えるだけでも大きな負担になります。
だからこそ、現場には現場だけの「最速の操作」が自然と生まれていました。
中でも印象に残っているのが、Enterキーの高速連打です。
ある担当者だけ頻繁に不具合が発生していましたが、何度確認しても再現できません。
実際に操作している様子を見てみると、画面が切り替わる前からEnterキーを強く連打していました。
その結果、システムが想定していないタイミングで処理が実行され、不具合が発生していたのです。
運用を見直し、「画面が切り替わってからEnterキーを押してください」とお願いしたところ、不具合はほとんど発生しなくなりました。
ちなみに、その担当者はEnterキーを強く叩きすぎて、支給してから一週間ほどのキーボードを壊してしまったこともあります。
しかも、こういう時に限って予備のキーボードがありません。
急いで家電量販店へ買いに走ることになり、
「原因不明のバグ対応をしていたはずが、キーボードの緊急調達までやることになるとは……。」
と苦笑いしたのを今でも覚えています。
想定外の業務フロー
もう一つ驚いたのが、運用方法です。
設計時に想定していた手順とは違う流れで入力している人もいました。
例えば、受注番号を検索画面から選択せず直接入力したことによる呼び出しエラーや、大量のマスターデータ・受注データ取り込みによるエラーなど、検証環境ではなかなか再現できないケースもありました。
現場からすれば、
「その方が早いから。」
ただ、それだけです。
しかし、その少しの違いが、思わぬ不具合を引き起こしていることもありました。
これが「現場だけで起こる不具合」の難しさでした。

最初にやったことは「証拠集め」
こういう時に一番大切なのは、原因を推測することではありません。
まずは事実と証拠を集めることです。
現場へ何度もヒアリングを行い、
- 発生日時
- 発生経緯
- プログラム名
- エラー内容とエラーログ
- 受注番号などのキーワード
を一つずつ整理していきました。
経緯が分からない場合は、「次に発生した時は、どんな操作をしたのか教えてください。」、「受注番号だけでも控えておいてください。」
とお願いすることもありました。
実際、受注番号やエラーログがきっかけで原因が特定できたことも少なくありません。
原因さえ分かれば、システム会社も調査できます。
逆に言えば、証拠がなければ誰も動けません。
原因が分からないなら運用で守る
原因が判明すれば、
「ここを修正しましょう。」、「見積もり対応にしましょう。」
とシステム会社と相談しながら進めます。
一方で、どうしても再現できないものは、
「しばらく様子を見ましょう。」
となることも少なくありませんでした。
その場合は、「この操作は避ける。」、「この順番で入力する。」
といった運用ルールを決めて対応しました。
システムを直せなくても、現場を止めない。
それも社内SEの大切な仕事です。
バグは「解決」ではなく「風化」することもある
原因が分かれば修正できます。
しかし、どうしても原因が分からないものは残ります。
半年後に突然また現れたり、いつの間にか誰も遭遇しなくなったり。
結局、「誰も原因は知らない。でも、なぜか平和になった。」
そんな終わり方をした不具合も少なくありませんでした。
完璧な解決ではなくても、現場が止まらず仕事を続けられる。
それも一つの「解決」だったのだと思います。
最後に
システム会社が作る「理想のシステム」と、現場で実際に使われる「リアルな運用」。
その間には、どうしてもギャップが生まれます。
社内SEは、そのギャップを埋める橋渡し役でした。
この経験を通して、一つだけ強く学んだことがあります。
- 現場を疑わない。
- システムを疑わない。
- まずは事実と証拠を集める。
これが、再現しないバグを解決する一番の近道でした。
もし今、再現しないバグに悩んでいる社内SEの方がいたら、焦らず一つずつ状況を整理してみてください。
仕事が終わったら、美味しいビールでも飲んで気持ちをリセットすることも大切ですよ。
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いかがでしたでしょうか。
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