在宅は「集中」、出社は「心の保守」。元社内SEがフルリモートを捨てて週1〜2出社を選んだ理由

2020年春。新型コロナウイルスの流行とともに、社内SEだった私の戦場は幕を開けました。「明日から全員、家で仕事ができるようにしろ」という至上命題。
特に大変だったのが、「遠隔操作(リモートデスクトップ)環境」の構築でした。全社員が自宅の不安定なネットワークから社内システムへ安全・快適にアクセスできるよう、不眠不休の突貫工事。エンジニアとしての意地をかけ、「これでみんなが救われる」という使命感に燃えていました。
目次
忍び寄る「在宅勤務の限界」と、1日150歩の絶望
しかし、自ら作り上げたフルリモートの理想郷は数ヶ月で色褪せました。一番の敵は、「話し相手がいない」という強烈な孤独です。
静けさに耐えられずBGM代わりにテレビを流し、一日の発声が会議の「お疲れ様です」だけ。自分の声が枯れていることに驚き、チャットの通知音は自分を追い詰める「攻撃音」のように聞こえ始めていました。
身体も悲鳴を上げていました。ある日スマホの歩数計を見て愕然とします。一日の総歩数、わずか150歩。
歩いたのはデスクとトイレの往復と、夕方の「自宅から50メートル先のスーパーまで」のみ。1年後の健康診断は、見たこともない数値の中性脂肪と人には言えない真っ赤な判定結果。私の身体(サーバー)は、孤独と運動不足で致命的なエラーを吐き出していたのです。
ITのプロが痛感した「物理層(対面)」の重要性
在宅勤務中、最も疲弊したのは「インターネットが繋がらない」という社員への電話サポートでした。画面が見えない相手に対し、1時間以上格闘した末に判明したのは衝撃の事実。
「……あ、すいません。そもそも家にインターネット契約してませんでした」
どれほど便利なシステムを組んでも、インフラがない場所では無力です。この時、ITのプロとして「物理的なトラブルには対面対応が最強のソリューションである」と、在宅の限界を突きつけられました。
なぜ「出社」がメンタルの再起動(リブート)になったのか
会社から「原則として出社を再開する」という通達が届いた時、世間では「時代遅れ」と叩く声もありましたが、私は安堵しました。私にとって出社は、孤独なループから抜け出すための「強制的な再起動」だったのです。
オフィスに戻って痛感したのは、「たわいもない雑談」の圧倒的なデトックス効果です。
仕事に関係のない世間話で笑うだけで、煮詰まっていた脳のメモリが一気にクリアされる。「話すこと」は、脳にとって最高のデフラグ(整理整頓)でした。
【比較表】出社 vs 在宅。心と体を安定させる「週1〜2」のバランス
「出社か在宅か」の二元論ではなく、大切なのは「要はバランス」です。私が辿り着いた、心身を最適化する運用ルールをまとめました。
| 比較項目 | オフィス出社(心の保守) | 在宅勤務(集中タスク) |
|---|---|---|
| 主な役割 | 脳のリフレッシュ・対面保守 | 重いタスクの集中処理 |
| コミュニケーション | 濃厚な雑談(SOSを拾う) | 希薄なチャット(孤独感あり) |
| 身体的健康 | 通勤による強制運動 | 50m先のスーパーのみ |
| 脳の状態 | 雑談でスッキリ解消 | 集中できるが、煮詰まりやすい |
結論:最強のパッチは「週1〜2の在宅」にある
現在は、週1〜2日の出社を組み合わせたハイブリッド型に落ち着いています。
- 出社日: 雑談で脳をスッキリさせ、現場のSOSに即応し、歩くことで身体をメンテナンスする。
- 在宅日: 誰にも邪魔されない環境で、重い書類作成や設計を一気に片付ける。
毎日在宅では心が枯れ、毎日出社では自分の時間が削られる。この「週1〜2」という絶妙な距離感こそが、自分自身というシステムを最適化する答えでした。
あとがき:孤独を感じているエンジニアへ
もし今、テレビの音で孤独を紛らわせ、50m先のスーパーへの往復だけで一日を終えている方がいたら。たまにはオフィスへ行って、誰かと「たわいもない話」をしてみてください。それだけで、止まっていた日常が、驚くほど軽快に動き出すはずです。
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