前回は、送り状発行プログラムをバーコードリーダーに対応させ、誤配送を減らすために改修した話をご紹介しました。
まだご覧になっていない方は、ぜひこちらもご覧ください。
👉 【元社内SE実録】「確認してください」では解決しない。誤配送を減らすため、送り状をバーコード対応にした話

今回は、現場から相談を受け、一から新しく開発した発注管理プログラムについてご紹介します。
販売管理システムには必要なデータは入っていました。しかし、そのままでは現場が発注判断に使いやすい形ではありませんでした。
そこで、現場長の判断を支えるために桐で発注管理表を作成したときの話です。
「販売管理システムからデータは出せる。でも、その後が大変なんや。」
ある日、現場長からこんな相談を受けました。
「販売管理システムからデータは出せるんやけど、その後の切り貼りが大変でな。発注するまでに時間がかかるんや。」
私はシステム担当として入社しており、現場長もそのことを知っていたため、相談してくださいました。
元になる管理表はExcelで作成されていました。
販売管理システムからデータを出力し、
- 必要な項目だけを抽出する
- 並び替える
- Excelへ貼り付ける
- 集計結果を確認する
という作業を繰り返し、ようやく発注判断ができる資料になります。
発注自体は月に数回でしたが、その資料を完成させるまでには最低でも約1週間かかっていました。
私は最初、
「Excelを自動化すれば解決するかな。」
と思いました。
しかし、詳しく話を聞くほど、それだけでは解決できないことが分かってきました。
問題は「Excel」ではなく「発注判断」でした
発注判断に必要なのは在庫だけではありませんでした。
実際に現場長が見ていたのは、
- 拠点ごとの現在庫
- 受注残
- 発注残
- 過去3か月の売上実績
- 3か月平均販売数
など20項目以上。
管理する商品も1,000点以上あります。
さらに商品には特徴がありました。
現場長が担当していた商品は、約1,000個単位で発注するものが多く、商品単価も高額でした。
少し多く発注すれば、1年以上在庫として残る可能性があります。
逆に発注を少なくすれば欠品します。
しかも商品は発注先を2~3社経由して製作・手配されるため、納品まで約2~3週間。
その間にも売上は変動し、ときには大口受注が入ることもありました。
つまり、「在庫が○個になったら発注する。」という単純な発注点管理では対応できません。
現場長が本当に欲しかったのは、「この数量を発注すると、在庫はいつまで持つのか。」を判断できる資料だったのです。

私が選んだのは桐でした
元になる管理表はExcelでした。
もちろんExcelで仕組みを作ることも考えました。
しかし、
- 大量の商品データ
- 複数拠点の在庫
- 売上実績
- 受注残
- 発注残
を毎回集計し、一つの管理表へまとめることを考えると、
当時の私は桐の方が適していると判断しました。
決め手は二つあります。
一つ目は履歴機能。
Excelでいうマクロのような機能で、一度作った処理を何度でも同じ手順で実行できます。
もう一つは外部データベースとの連携です。
販売管理システムから必要なデータを取得し、ボタンを押した時点の最新情報で管理表を更新できます。
必要だったのは、新しいシステムではありません。
現場が安心して判断できる材料を、すぐに用意できる仕組みでした。
ボタン一つで最新データへ更新
特に便利だったのが、桐の道具箱という機能でした。
ブラウザのお気に入りのように、よく使う処理を登録できます。
私は発注管理表を更新する履歴を登録しました。
すると利用者は、
ボタンを一つ押すだけで、
- 最新データを取得
- 必要な情報を集計
- 発注管理表を更新
できるようになりました。
改善前は、資料作成に最低でも約1週間。
改善後は、約2~3分です。
現場長は資料を作る時間ではなく、「どの商品を、どれだけ発注するか。」という本来の仕事に集中できるようになりました。
あえてフォームではなく、テーブルを選びました
桐にはフォームやレポートを作成する機能もあります。
それでも私は、あえてテーブルを選びました。
理由は二つあります。
一つ目は、元になっていた管理表がExcelだったことです。
桐のテーブルは一覧形式なので、利用者は違和感なく使えます。
もう一つは情報量です。
20項目以上を横方向へ並べる必要があり、フォームでは画面が複雑になります。
その点、テーブルなら一覧で確認しやすく、履歴機能もそのまま利用できます。
現場長はITが得意な方ではありませんでした。
だからこそ私は、
「誰でも迷わず使えること」
を最優先に設計しました。
要望にはなかった機能も追加しました
発注管理表としては完成していました。
しかし運用を考えると、さらに便利にできると思いました。
そこで履歴機能を利用し、
- 過剰在庫の商品
- 在庫が少なくなっている商品
をボタン一つで絞り込める機能も追加しました。
これは依頼された機能ではありません。
それでも、「現場なら、きっと必要になる。」と考えて追加しました。
その後も現場の声を聞きながら改善を重ね、少しずつ機能を増やしていきました。

「これ、他の発注担当者にも使わせたい。」
実際に運用が始まると、現場長からの評判は予想以上でした。
当初は、一部の商品だけを管理する予定でした。
しかし、
「これ、他の発注担当者にも使わせたい。」
と言っていただき、管理対象の商品は少しずつ増えていきました。
現在では10~15人ほどの発注担当者が利用しているそうです。
そして、私が一番うれしかった言葉があります。
「これで仕事が回せる。」
プログラムを褒めてもらえたのではありません。
現場の仕事が止まらずに回るようになった。
そのことを評価していただけたのです。
社内SEとして、この言葉は今でも忘れられません。
気が付けば、約10年間使われる仕組みになっていました
私は最初から、
「10年間使われるシステムを作ろう。」
と思っていたわけではありません。
目の前で困っている人を助けたい。
その思いで改善を積み重ねただけです。
もちろん、その間には販売管理システムの入れ替えもあり、プログラムの修正が必要になることもありました。
それでも約10年間使われ、現在でも10~15人ほどの発注担当者に利用されていると聞いています。
私は会社を離れましたが、作った仕組みは今も現場で動き続けています。
社内SEとして、これ以上うれしいことはありません。
まとめ
私はこの経験を通して、一つのことを学びました。
社内SEの仕事は、
依頼されたものを作ることではありません。
現場が本当に困っていることを理解し、
必要な情報を整理し、
安心して判断できる環境を作ることです。
今回の発注管理表も、発注数量を決めるシステムではありませんでした。
現場長が、
「この数量なら大丈夫。」
と自信を持って判断するための材料を、一画面にまとめた仕組みです。
そして、本当に役立つ仕組みは、無理に広げなくても現場で評価され、自然と利用者が増え、長く使われ続けます。
この発注管理表は、そのことを私に教えてくれた、社内SE時代を代表する仕事の一つです。
次回は、AIについて私が日頃から感じていることを、ブログ記事にまとめたいと思います。
AIはとても便利な存在ですが、私は「AIに任せる時代」ではなく、「AIと一緒に活用する時代」だと考えています。社内SEとして、そして現在の仕事を通して感じているAIとの向き合い方についてお話しします。
👉 AIについてどう思う?|私は「With AI」の時代だと思っています
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